生えてきたサンゴ

我が家には海水水槽があります。
5年ほど海の生物を飼育してきて発見もあったので、紹介していこうと思います。

このブログはアクアリウムブログという訳ではないので、アクアリウムをやらない人にも分かるよう心掛けて書こうと思います。
興味が無い方も良かったら読んでみてください。

※注意
この記事はアクアリウムをお勧めするものではありません。
生き物を飼うのは、責任も発生しますし、時間もお金も掛かります。
もしやってみたいと思ったら、まずは良く調べてみてください。
僕は基本的なことは本を買って調べ、より深い部分はここで学びました。

さて、本題です。

海水生物の飼育にはいろいろな方法がありますが、飼育している生物が新陳代謝をする際に汚した水を、綺麗に保つ仕組みが必ず組み込まれています。
中でも食べ残した餌や糞などから発生する毒素を、バクテリアなどの力を借りて分解する「生物ろ過」は、ほとんどの水槽で使われている基本的な仕組みです。
生物ろ過の助けとして海中にある岩を水槽に入れる方法があります。
その岩は「ライブロック」と呼ばれます。
サンゴが死んだ後に残った骨格で出来ていて、住み着いたバクテリアや小さな生物の力で水の浄化を手伝ってくれます。


ところどころ紫色に見える岩がライブロックです。

海中にあったライブロックを水槽に持ち込むので、ライブロックに乗ってやって来た新しい住人が気付かないうちに増えていたりします。
そんな具合に、うちの水槽で勝手に生えて来たサンゴについて紹介します。

ある日、ずっと同じ位置に置きっぱなしだったライブロックの裏側に、緑色に光る小さな輪を発見しました。
海の浅い場所にいるサンゴは、体内に共生している褐虫藻による光合成で必要な栄養の大部分を賄っています。
そういった光合成をするサンゴの多くは、害のある波長の光から身を守るためなどの理由で蛍光タンパク質を持っていて、一定の色で光を反射するため光って見えます。
つまり、光の当たらないライブロックの裏側に光を必要とするサンゴがいたのです。

これには驚きました。
このライブロックは1年2ヶ月も同じように置きっぱなしだったので、そのサンゴにほとんど光は当たりません。普通なら死んでいます。
ガラスや砂からの僅かな反射光で光合成をし、足りない分は口から微生物を捕食することで補い、生きながらえていたのでしょう。
すぐに根本から切り取って光の当たる場所に移動させました。


かなりブレていますが、これが発見から1週間くらいの写真です。


赤い丸で囲った部分が蛍光タンパク質で発光していてサンゴだと分かる部分です。
大きい方は直径で4ミリ程度、小さい方は3ミリに満たないサイズです。
この段階ではどんなサンゴか全く分かりません。

光の届かないライブロックの裏側で1年以上。
ほとんど成長していなかったサンゴですが、光の当たる場所に移した後はどんどん育ちました。


これが光が当たるようになってから1ヶ月後の状態。
カメラアングルの都合で位置関係が逆に写っていますが、大きい方が1センチほど、小さい方が5ミリほどになりました。
まだどんなサンゴなのかは見えてきませんが、生えてきた土台になっている部分がLPS(ロングポリプストーニーコーラル:触手が長く中心に大きな骨格を持つサンゴの種類)と呼ばれるサンゴの骨格に見えるので、死にかけて再生したLPSなのではないかと予想しました。


発見から6ヶ月後。1.5センチくらいです。
口の周りから触手を出しています。
個体数が増えていかずに単体が大きくなっているので、群体を作るタイプではなく単体で生きるタイプのサンゴであることが分かります。


1年後。2.5センチくらいです。
土台になっていた骨格が隠れて見えないくらいのサイズになりました。
大小2体いたサンゴですが、この頃には大きい方しか見られなくなってしまいました。
小さい方は生存競争に負けて死んでしまったのだと思っていました。


発見から1年10ヶ月。
固定が困難だったので土台となっていた骨格ごとプレートに接着しました。
土台になっていた骨格は大きくなった体に包まれてしまっている状態です。
4センチくらいになりました。


死んでしまったとばかり思っていた小さい方のサンゴは、なんと大きい方に融合して生きていました。
赤い丸で囲っている部分がそれぞれ体の中心にある口です。
通常は単体性のサンゴは口が一つなので、2体が融合している状態であると分かります。


およそ2年後の現在。4.5センチくらいです。
成長して形状がしっかりとしてきました。
形状からアザミハナガタサンゴではないかと思っています。

それぞれの口の周りから触手を広げています。
餌の匂いを感じた時や、本来微生物が多く漂うはずの夜間に、捕食のためによく触手を出します。
飼育していない人はサンゴが餌を食べるというのがあまり想像出来ないと思うので、餌を食べている写真を載せておきます。


あーん


ごっくん

こんな感じです。
魚用の粒状の餌を粘液のようなもので包んで口に運んで食べています。
食べ終わるまで15分くらいです。

■今回の件で分かったこと。

  • 光が当たるようになった後の成長度から考えると、光合成をするサンゴにとって光はやはり重要
  • 光が届かないところでも生き延びる力はある
  • LPSが死んだ後に残る骨格から新たにサンゴが生えて来たことから考えると、完全に骨格になってしまって死んだように見えても、残った細胞片から再生する可能性がある
  • 口が2つあるサンゴは分裂ではなく融合した可能性がある
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